産科医のコウノトリ先生

 『コウノトリ』は産科医視点から出産の現場を描く医療系マンガ。病気の治療が目的ではないので健康保険適用外であること、新生児医療の現場での未熟児の扱いなど、色々と医療だけでなく倫理や法律の問題にも触れた社会派な作品。しかも、このコウノトリ先生は、夜はベイビーというアーティスト名でブルーノートのステージにも立つジャズピアニストという設定。どんだけーと思いつつも、僕のような男が興味関心を示さなさそうな医療現場の側面を炙りだしてくれています。一読の価値あり。

 

 僕は普段、派遣ヘルパーとして介護を行なっているので新生児医療は無関心ではいられない問題。障害児の数は、確かここ10年くらいでおよそ1.5倍とずっと右肩上がり。気管切開をしているためたんの吸引が必要な「医療的ケア児」という、これまでにはなかった介護カテゴリーもあるくらい。他にもこのマンガでは、年間の中絶数はおよそ20万件でこれは出産の5件に1件の数なんだそう。小谷はカトリックみたく、「中絶絶対認めん」には断固反対なのですが、この日本の中絶数はなかなか難しいと思っている。僕の知り合いにも心病んで看護師辞めた子がいます。『コウノドリ』でも中絶が理由ではないが、やはり未熟児を救えなかった女医が「助けてあげられなくてごめん」と、その件を引きずり現場を離れるエピソードがあったりと非常にリアル。命を扱う現場では、命を扱うということはまさにその言葉通りの重さを持つ、そんなことを教えてくれるマンガです。